漁業調整規則例の改正に関する

水産庁長官通知(全文)

14水管第2860号

平成14年12月12日

 別記都道府県知事 殿

 

                                               水産庁長官

 

都道府県漁業調整規則例の一部改正について

 

 指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令が平成14年8月1日に施行されたこと及び遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律が平成15年4月1日から施行されること等を踏まえ、下記の理由により、別添1のとおり都道府県漁業調整規則例(平成12年6月15日付け12水管第1426号水産庁長官通知)の一部を改正するので、業務の参考とされたい。

 

 

1.許可船舶に対する停泊命令等の行政処分に係る規定の不備是正(第53〜55条関係)
  漁業調整規則例(以下「規則例」という。)第53条においては、知事は、漁業法第66条第1項又は規則例第7条に基づき漁業の許可を受けた船舶につき漁業に関する法令等に違反する事実があると認める場合において、漁業取締り上必要があるときは、当該船舶の停泊を命ずることができることとされている。
  しかしながら、近年、一部の県において、違反漁業者が停泊命令の対象が違反時に使用した船舶に限られるものと解釈し、処分を免れんがために代船申請を行おうとするような悪質な事例が発生している。
  一方、規則例第53条の現在の規定ぶりは、明示的にこのような代船について停泊命令を行えるものとはなっていないため、この点について明確な根拠を欠いている現状であり、停泊命令という重大な不利益処分を遂行するにあたって実務上の支障が生じているところである。
  このため、適正な停泊命令処分の実効性を確保する観点から、今後このような船舶の使用権等を移転することによる処分逃れを未然に防止するため、許可船に対する停泊命令について、違反船舶に着目した規定ぶりから、違反漁業者に着目した規定ぶりに改めることとする。また、条文の規定上同様の問題を抱える規則例第54条(船長等の乗組み禁止命令)及び第55条(無許可船舶に対する停泊命令)についても、同様の改正を行うこととする。
  なお、指定漁業の許可及び取締り等に関する省令(昭和38年農林省令第5号。以下「指定省令」という。)、承認漁業等の取締りに関する省令(平成6年農林水産省令第54号)及び小型機船底びき網漁業取締規則(昭和27年農林省令第6号)の行政処分に係る規定については、同様の観点から平成14年8月1日に改正が行われたところである(別添2参照)。

 

2.漁業監督吏員が停船命令に使用する信号の変更(第57条関係)
  規則例第57条においては、漁業法第74条第3項に基づく検査又は質問をするため必要があるときは、漁業監督吏員は漁業に従事する船舶の船長等に対し停船を命ずることができるとし、その際の停船命令の信号(長声一発、短声4発ほか)を規定している。
  これらの信号は、漁業監督官が同様の停船命令を行うときの信号を規定した指定省令第74条等の規定に倣ったものであるが、指定省令の当該規定については、近年漁業取締り分野において国際基準への対応が要請されていることから、国際的に広く認知されている国際海事機関(IMO)が定めたLの信号(短音1回、長音1回、短音2回ほか)を採用することとし、本年8月1日に所要の改正が行われたところである(別添2参照)。
  このため、漁業取締り実務上、指定省令等に基づき漁業監督官が用いる信号と都道府県漁業調整規則(以下「規則」という。)に基づき漁業監督吏員が用いる信号を同一のものとしておくことが望ましいことから、規則例第57条の停船命令の信号についても指定省令の規定に合わせるべく、所要の改正を行うこととする。

 

3.非漁民の漁具漁法の制限におけるまき餌釣漁法等の解除(第51条)
  平成15年4月1日から遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律(平成14年法律第76号。以下「改正法」という。)が施行され、遊漁船業について、届出制から登録制に移行されるほか、業務規程の届出、遊漁船業務主任者の選任、水産動植物の採捕に関する規制内容の周知等が遊漁船業者に義務づけられるとともに、業務改善命令等の都道府県知事の監督権限に関する規定が設けられる等、大幅な規制強化が行われることとされている。
  その結果、遊漁船業者が利用客に規則の採捕規制の内容を周知せずにこれに違反した採捕行為を行わせた場合には、利用客の当該採捕行為が規則違反となるのに加え、遊漁船業者に対しても業務改善命令、事業停止命令等の行政処分がなされ、これに違反した場合には規則違反を上回る厳しい罰則が適用されることとなる。また、遊漁船業務主任者の選任基準として受講が義務付けられている講習において、規則等に基づく採捕規制の内容を明示し、その内容を利用者に周知し遵守させるよう指導することが求められる。
  一方で、規則における非漁民等の漁具漁法の制限については、一部の規制内容と遊漁者等の認識が著しく乖離し、規則に違反する行為がほぼ常態化しているにも関わらず、これに対して都道府県が有効な措置を講じることが現実的に困難な状況にあるような実態が見受けられているところである。改正法による新制度の下、このような状態を放置すれば、都道府県としても遊漁船業者等に規則の遵守をいかに指導していくかという問題を抱えるとともに、遊漁船業者としても半ば常態化している行為がいつ違反として指摘を受けるかという極めて不安定な状態に置かれることとなる。このため、このように実態に即さないものとなっている採捕規制については、漁業調整上支障のない範囲において見直しを行う必要がある。

  以上のような問題意識の下、規則例第51条(非漁民等の漁具漁法の制限)について以下の改正を行うこととする。

(1)まき餌釣漁法の解除
   現在、規則例第51条第1号においてまき餌釣は遊漁者には認めない漁法として例示されているが、実態としては沿海都道府県の約半数の規則において既に規制されておらず、全国的にもまき餌釣は遊漁船業の主要な営業種目となっているほか、海釣り公園等でも用いられている等、一般的な漁法として定着している実態がある。また、こうした遊漁の実態が漁業との間で大きなトラブルとなった事例は近年ではほとんど見受けられず、遊漁者に対して禁止漁法として制限する必要性は一般的には認められなくなっている。

   このため、規則例第51条第1号を改正し、漁業以外の場合に認められる漁法にまき餌釣を含めることとする。

   なお、本件規則例改正を踏まえて規則改正を行う際に、都道府県ごとの実状により、特定の区域を区切り、まき餌釣漁法の禁止区域として別途規定することも考えられる。
(2)その他必要に応じた漁法の解除
   現在のところ、全国的に見て遊漁の実態と規則例の規定が著しく乖離していると認められるものはまき餌釣漁法以外には想定されないが、まき餌釣漁法以外についても、これと同様に規制の内容と実態が乖離していながら規則を遵守させるための有効な措置を講ずることが困難と考えられる漁法(例えば、ひき縄釣漁法を禁止していながら地元漁協や地方公共団体がひき縄釣大会を主催・共催したり表彰を行っている事例等)については、都道府県ごとの実状に応じて規制内容を見直し、所要の規則改正を行う必要がある。
   このような規則改正については、これまでも都道府県ごとの事情に応じて随時見直しが行われてきたところであるが、規則例第51条においてはこれらの漁具又は漁法を第1号から第5号までに限定列挙する形式をとっているため、これら以外の漁法の解除についての都道府県の裁量が原則として認められないものとして理解されている例が一部には見受けられる。
   このため、都道府県の判断により地域の実状に応じた規制の見直しが随時可能であることを明確にするため、例として漁法等を列挙している他の条文(第3条等)の形式に合わせ、規則例第51条の例示の表現を改めることとする。
(3)用語の修正
   具体的な規制内容の変更を伴うものではないが、規則例第51条中、関係者から誤解を受けやすい下記の用語についてより適切な表現に改めることとする。
  @「歩行徒手採捕」(規則例第51条第5号)
       いわゆる「手づかみ」による水産動植物の採捕として規定されているものであるが、「歩行」しながらの採捕以外は認められないとの誤解があることから、「手づかみ」による採捕であることを明確にするため、表現を「徒手採捕」に改める。
  A「非漁民等の漁具漁法の制限」(規則例第51条見出し)
        遊漁者等が水産動植物を採捕する場合の漁具漁法の規制を「非漁民等の漁具漁法の制限」と総称しているが、この「非漁民等」という表現については、対象者が誰であるのか理解しにくい、現在の遊漁の状況及び遊漁者の立場を踏まえていない等の批判的な意見があることから、これをより明確かつ適切な表現として「遊漁者等」に改めることとする。

 

      【 全釣り協の解説は「海釣りの問題点」の項参照 】

 

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