水産庁長官通知
海面遊漁と漁業の調整ガイドラインと
都道府県漁業調整規則例の一部改正について

水産庁長官は、12月12日付けで関係都道府県知事あて、水産庁長官通知を行った。内容は
  
「海面における遊漁と漁業の調整について」
  「遊漁と漁業の調整のための規制の整備について」
  「都道府県漁業調整規則例の一部見直しについて]

の3部にわかれている。
ガイドライン及び調整規則例改正についての(社)全釣り協のスタンス
上記のガイドライン及び都道府県漁業調整規則見直しに関して、全釣り協は、実情に即したものとして高く評価するが、今後、都道府県においての漁業調整規則の改定にあたり、現在の海面利用協議会が十分に機能していない可能性を含め、関係都道府県及び、漁業調整委員会にあて、各都道府県釣り協あるいは、釣りインストラクター連絡機構などにより、実情理解のための積極的な行動を開始することにしている。
水産庁長官通知の概要
・「海面における遊漁と漁業との調整について」のガイドライン
 水産基本法にもとづく遊漁の位置づけを示すもので、これまでは昭和47年5月9日付け水産庁長官通知で基準例および実際例を参考に、都道府県漁業調整規則の整備をしてきたが、その後遊漁船業の発達、プレジャーボートの増加などによって、遊漁者が増加し、行動範囲が広域化するなど、遊漁の状況が大きく変化している。
 また、昨年6月に制定された水産基本法では、遊漁を含めた水産資源の保存管理の推進、都市と漁村の交流の促進、遊漁船業の適正化などの施策を講じることが規定され、「遊漁船業の適正化に関する法律化」の一部改正、漁業協同組合が定める資源管理規定の対象に遊漁船業を含めることとする「水産業協同組合法」の一部改正が行われた。
こうした状況をふまえ、水産資源と海面の調和のとれた利用を促進し、
漁業と遊漁の共存をめざしたガイドラインを作り、
調整規則などの整備が必要と考えられることがらをとりまとめたもの。

 

 ・遊漁と漁業との調整についての基本的姿勢
 現在の遊漁の実態は、調整規則の制定当時からかなり変化しており、遊漁者、遊漁船業者、漁業者がお互いに共存の努力をするとともに、資源の持続的な利用が可能となるよう、保存、管理に努めることが必要となる。取組みについては、遊漁と漁業の実態が各地で異なっているため、従来から調整規則、海区漁業調整委員会指示、漁場利用協定の自主的な取り決めなどによって、それぞれの地域の遊漁と漁業の実態に即した調整が行われているが、今後も同様の姿勢でのぞむ。
 遊漁を含めて、水産動植物の採捕規制を行う場合には、遊漁と漁業の実態をふまえ、それぞれの規制のバランスを考慮し、遊漁に対して過度の規制とならないよう留意する必要がある。

 ・遊漁と漁業の調整のための協議機関
 従来から都道府県ごとに海面利用協議会を設置し、遊漁関係者、漁業関係者、学識経験者等に、遊漁と漁業との紛争防止、遊漁にかかる規制、マナーの普及啓発に関する協議等、調和のある漁場利用に向けた活動が行われてきた。今後もこの協議会を継続して設置したうえ、遊漁と漁業の実態把握につとめる。なお、遊漁も対象とした各種規制を導入するに際して、海面利用協議会の意見を聞くほか、公聴会、パブリックコメントなど広く意見を聞く機会の確保にも配慮する必要がある。
 さらに、1都道府県のみでは対処できない状況については、関係都道府県による広域海面利用協議会を設置するなどが挙げられている。

 ・遊漁と漁業との調整のための規制の整備について
1、        遊漁にかかる規制の見直し
@      まき餌釣りの全面的な禁止措置の見直し
遊漁としてのまき餌釣りは、沿海都道府県の約半数で規制されておらず、遊漁船業における主要な営業種目となっているほか、海釣り公園等での利用など一般的な漁法として定着している実態がある。
このため、漁業においてまき餌の使用が制限または禁止されているなど、資源管理や漁業調整の観点から規制が引き続き必要な場合を除いて、全面的な禁止は行わないこととする。必要に応じ重要漁場などを調整規則でまき餌釣り漁法による採捕禁止区域とするなどによって、資源管理の徹底をはかる。
A      光力(夜間の照明利用)規制の導入
一本釣り、イカ釣り漁業の光力規制を行っている一方で、遊漁船等が漁業の光力規制を超える照明を用いて夜間操業することが一部で問題になっている。したがって、遊漁における光力使用の実態をふまえ、漁業に対する規制とのバランスも考慮のうえ、遊漁に対する光力規制を導入する。
B      引き縄釣りにかかる規制措置の見直し
引き縄釣り(トローリング)は、ほとんどの都道府県で遊漁での利用を禁止されてきたが、近年地方公共団体、漁業協同組合の後援や協力のもとに、カジキ類の引き縄釣り大会が開催され、漁業者団体が開催の一翼を担っている事例や、漁業者が兼業している遊漁船業においても利用される事例が見受けられる。このように実態に則さないものになっている規制については、漁業調整上の支障がない範囲で遊漁に対する引き縄漁法の全面的な禁止措置を見直す必要がある。
この場合、都道府県ごとの実態に応じて、他種漁業との漁場利用調整のため、引き縄釣漁法による採捕禁止区域、禁止期間を設定する。あるいは、暫定的措置として、海区漁業調整委員会指示に基づき、操業区域、期間、隻数などを制限する。
C      歩行徒手採捕の表現
「手づかみ」による採捕であるが、表現を徒手採捕に改める。
D      イカリ止めをして行う竿釣・手釣にかかる規制の導入
漁船、遊漁船、プレジャーボートが特定の海域に集中し、イカリ止めして釣りを行うことにより、漁場の競合、固定式漁具の破損が問題となっている。調整規則において区域、期間を限定して、イカリ止めして行う釣漁法による採捕を禁止する。あるいは、暫定的措置として、海区漁業調整委員会指示に基づき、区域、期間を限定して操業隻数を制限する。
E      非漁民を遊漁者へ
調整規則において「非漁民等」という表現については、「遊漁者等」に改める。

 

以上のような調整規則の見直しのほか、
2、漁業と遊漁に共通した規制の見直しとして
漁具、漁法を特定した水産動植物の採捕禁止区域の設定。
採捕の制限または禁止(大きさの制限、採捕禁止区域、採捕禁止期間等)。漁船、遊漁船、プレジャーボートが輻輳する海域での隻数制限。
などもあげられている。
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