警告 

港湾立ち入り制限取材でトラブル

管理者などとの不信関係に拍車も

 

SOLAS条約による主要港湾の立ち入り制限問題にからみ、「釣り人のマナーを問う」というテーマで、
あるテレビ局と港湾管理者、それに取り締まり関係者が、あらかじめ用意した筋書きで取材が行われた
可能性があると、川崎周辺の釣り人から、全国の釣り人に向けて警告を発しています。

 


 TV取材事件が発生したのは、11月20日(土)の午前10時半から11時にかけての時間帯です。
 川崎港周辺では、かねてから好釣り場として知られていた東扇島一帯が、7月1日から外国船の着岸する場所として立ち入り禁止、施錠されていました。
しかし最近になって、岸壁での釣りは問題があるものの、防波堤部分なら港の安全対策とは関係がないから、釣りをしても黙認状態にあるとのうわさが広がり、柵の隙間などから出入りする釣り人が次第に増えていたそうです。


 これをあるTV局で「釣り人のマナーの悪さを指摘する」ため、取材撮影する目的で、あらかじめ港湾管理者側と話し合い、釣り人を誘導し、竿をださせるよう仕組まれた可能性があると、現地の釣り人から知らせが入りました。


 事実関係を確認するため、調査を進めていますが、港湾の立ち入り制限について、法は法として遵守するが、過剰と思われる広い制限区域や、保安上必要とは思えない防波堤部分の設定など、管理者側の姿勢に不満を持つ釣り人も多いだけに、不測の事態が発生しないよう、十分注意することと、冷静な対応、情報の提供などを釣り人のみなさんにお願いします。

 

 【ある釣り人の話

@     東扇島で竿を出せるらしいという噂を聞いて出かけてみたら、防波堤にはかなりな数の釣り人が竿を出していた。

A     ゲートが開かれているので、警備の担当者らしい人に「入ってもいいですか」と、聞いたところ、「撮影があるから自由に入っていいそうです」と、そばにいた別の人が答えた。警備らしい人もなにも言わなかったので、入って釣りをはじめた。

B     釣り座にはかなりな数の釣り人がおり、中にはゲートが開いたことを不審がる人もいてこの人は早朝に塀をのりこえてきただと思われた。

C     この人は、管理者の好意で釣らせてもらっていると信じていた。

D     そのうちに、漁船にカメラを据え、海側から防波堤をなめるように接近して撮影しはじめた。

E     突然、人が駆けてきてゲートを閉め、カギをかけた。カギを閉めるということは、やはり立ち入り禁止なのだなと思い、仲間と相談して出ることにしたが、カギが掛けられているので、塀を乗り越えるほかに方法は無かった。

F     乗り越えている姿を、逐一カメラがとらえていた。よくみると、カギはテレビのスタッフが持っていた。

G     別のテレビスタッフから、コメントを求められたので、その事態に動転してはいたが、比較的冷静に答えることができたと思っている。

H     撮影スタッフは、テレビ朝日の取材だと言い、121日にオンエアすると言っていた。

I     帰ってからこの日の経過を反芻してみたが、どう考えても不審な経過だと思う。閉鎖してあるゲートがわざわざ開かれていたり、テレビ局のスタッフがカギを持って走ってきたり、さらにその直後には海上保安庁か水上警察か我々にはよく分からないが、公の取り締まり船がやってきて、釣り人に立ち去るよう警告したりと、あまりにも計画的過ぎる。

J     テレビでどのような報道のされ方をするのかは分からないが、国で立ち入り禁止と指定した場所であることを承知はしていても、常識的に見て荷役とは全く関係のない場所であり、もともとの指定に納得できない部分があったから、自由にどうぞと言われた時に、つい入って釣りをしてしまった。法を破ったことに関しては、自分の責任であると考えるが、わざわざテレビ局までが加わって誘導したかの行為には、言いようのない不信感をおぼえるし、それにくみした管理者側のやりかたは、市民と港湾の遊離した関係の象徴であり、大きく欠落した部分があると思っている。

 

 【テレビ朝日スーパーJチヤンネル取材関係者のはなし

@     港湾局から、取材許可をもらって撮影のため15分ほどゲートを開けた

A     スタッフのほうでは、自由に入ってよいとの発言は一切していない

B     釣り人のマナーの悪い点を反省してもらう意図での取材である。

C     現実に、巡視艇の勧告を受けても出なかった人もいた。

 

解説と背景

  (社)全日本釣り団体協議会ではSOLAS条約に伴う港湾の立ち入り制限について、109日の理事会で次のように決定しています。

@     立ち入り制限問題は、港湾にける親水地域設置等ここ数年の国の取り組みとは矛盾するが、外国との条約締結により国が決めた法律だから、釣り人もこれに協力する。

A     すべての海岸などで、不審な人物、不審な物体を見かけた場合、速やかに通報するなど協力姿勢を周知させる。

B     各地域において管理側と相互理解と信頼関係を深め、この問題について、制限区域の

見直し、使用頻度の低い岸壁などでは、使用時以外の限定的な立ち入りを認める。など柔軟な対応を求めていく。

という方針でした。

 

かねてからいわれているように、岸壁などでのゴミの放置、港湾施設などにおける立ち入り禁止の無視など釣り人側のマナーの悪さに起因しています。
これについては、釣り人側でもあらゆる機会を通じ、ゴミの放置に反省を求める呼びかけを行ったり、ゴミの回収活動を実施するなど次第に自浄の気運が高まってきています。また、釣り場での事故等については、各自の責任であるとの考え方を周知徹底させ、海上保安庁とも連携して、釣り場ではライフジャケットを常時着用することを釣り人の常識として、普及させるよう努力を重ねてきています。
一方、港湾の管理は、国民から港湾管理者である地方自治体に管理を委託しているというのが本来の姿であるわけですが、旧海軍、米軍による戦中、戦後の管理体勢以後50年あまり、港湾施設の管理権は港湾関係者にあるとの考え方が往々見受けられました。
企業の岸壁などによく見られる立ち入り禁止などについても、港湾施設は使用、管理し、取り締まる側による一方的なものであり、これに市民が関与することは許されず、せいぜい“黙認”というのが、これまでの常識とされてきています。
このことに、あえて異をさしはさむわけではありませんが、管理者の中には、事故が起きたとき、管理責任を問われるのではないかという思いがあり、釣り人の側でも、“黙認”を承知の上でおそるおそる釣りを楽しむという状態でした。
しかし、事実上、都市周辺の住民が“釣り”という、この島国ではきわめて普遍的な楽しみを得るためには、港湾の岸壁で“黙認”され、有効に利用するほかありません。
秋の釣りシーズンなど、全国の埋立地や岸壁でファミリーフィッシングを楽しむ釣り人の数は一日で1000万人を越すとされています。港で釣りが出来ないとなれば、釣り存亡の危機であるわけです。
このような問題について国の側でも、親水設備の充実や、緑地造成など、港湾における市民と海の接触に強い関心をもつような施策が実行されてきています。
ようやく市民と港湾の接触が始まったばかりの時期にあたるわけです。

 

今回の港湾の対応や報道の姿勢の如何では、こうした市民と港湾当局の信頼関係の成立を、根底から覆す可能性がある事態としてとらえ、事実関係の調査を進めることにしています。

 

 全国各地で起きている港湾立ち入り制限や、これに関連しての情報をお持ちの方は、

ぜひ全釣り協あて、お知らせ下さい


この取材に関して、該当する番組は、予定されていた12月1日には、放映されませんでした。

引き続き、調査を続けています。



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